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損害保険3社の決算を紐解く:資産運用が利益の半分を担う構造変化と、会計基準変更で分岐したFY2026

東京海上・MS&AD・SOMPOのXBRLデータを比較。3社合算純利益はFY2022の9,079億円からFY2026に16,818億円へ。資産運用純益が利益の過半を占める構造変化と、FY2026の開示断絶を検証する。

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損害保険決算分析東京海上MS&ADSOMPO

本稿は、TDnetで公開された各社決算短信のXBRLデータのみを用いて、損害保険3社(東京海上ホールディングス:8766、MS&ADインシュアランスグループホールディングス:8725、SOMPOホールディングス:8630)の財務構造を比較分析するものです。株価指標・セグメント別損益・金利や為替の市況値は提供データに含まれないため、本稿では一切扱いません。

1. 導入:3社が同時に「二本柱」構造へ

提供データを通期で並べると、損保3社の姿は明確に変わっています。正味収入保険料という本業の規模拡大に加え、資産運用から生まれる利益(資産運用純益)が経常利益の押し上げ要因として急速に膨らみ、FY2025時点では保険引受純益と資産運用純益がほぼ拮抗する水準に達しました。

一方でFY2026(データ上の最新通期)は、3社いずれも損益計算書の細目タグが「-」となり、税引前利益・純利益・貸借対照表の主要項目のみが取得可能です。純資産と利益剰余金が同時に大幅増加していることから、会計基準の変更に伴う開示体系の変化と考えられます。したがって本稿は、構造分析はFY2022〜FY2025のJ-GAAPベース、最新期の比較は税引前利益・純利益・B/S・CF・還元に絞るという二段構えで進めます。

データ上の留意点:SOMPOはFY2025から国際会計基準(IFRS)に移行しており、保険固有項目が「-」となっています。東京海上・MS&ADもFY2026で同様に細目が欠落しており、FY2025→FY2026の損益比較は同一基準ではない可能性があります。また各社が短信で開示した前年同期比タグ(東京海上の純利益+17.9%、MS&ADの+70.1%)は、本稿がFY2025→FY2026で算出した変化率と一致しません。開示期間・基準が異なる比較値と見られるため、本稿では自ら算出した数値を優先します。なおSOMPOの開示値(純利益+163.3%)は、6,400億円÷2,431億円=+163.3%と完全に一致します。

2. 業界全体トレンド:純利益は4年で1.85倍

3社合算の推移です(単位:億円)。

3社合算FY2022FY2023FY2025FY2026
正味収入保険料107,125120,75099,794 ※
経常利益12,7338,57523,889 ※
親会社株主帰属純利益9,0796,29019,89916,818
総資産660,674671,604733,685811,984
有価証券457,893444,469370,229 ※
純資産94,16085,829133,824198,245

※東京海上+MS&ADの2社合算(SOMPOは当該項目が「-」)。FY2024はSOMPOのデータが提供されていないため合算不可。

正味収入保険料は、比較可能な2社ベースでFY2022の74,968億円からFY2025に99,794億円へ拡大しました。

2社合算 正味収入保険料CAGR = (99,794 ÷ 74,968)^(1/3) − 1 ≒ +10.0%

年率10%の増収は、国内の物価上昇に伴う保険料水準の変化と海外事業の連結拡大が併存した結果と考えられますが、内訳は提供データからは分離できません。

純利益はFY2023にいったん6,290億円まで落ち込んだ後、FY2025に19,899億円へ急回復し、FY2026は16,818億円となりました。

3社合算 純利益CAGR(FY2022→FY2026) = (16,818 ÷ 9,079)^(1/4) − 1 ≒ +16.7%

総資産は660,674億円→811,984億円へ拡大(CAGR +5.3%)。特徴的なのは純資産の伸びで、FY2025の133,824億円からFY2026に198,245億円へ約48%増加しています。利益剰余金も3社合算で85,818億円→162,857億円へ倍増しており、利益の内部留保だけでは説明できない規模です。会計基準変更に伴う保険負債・剰余金の組替が影響していると見られます。

3. 経常利益トレンド:FY2023の底打ちから急角度の回復

経常利益(億円)FY2022FY2023FY2024FY20253年CAGR
東京海上5,6745,0398,42514,600+37.0%
MS&AD3,9042,3114,1649,289+33.5%
SOMPO3,1551,225算出困難

FY2024→FY2025の伸びは東京海上+73.3%、MS&AD+123.1%。FY2023の落ち込み(東京海上-11.2%、MS&AD-40.8%、SOMPO-61.2%)からの反転幅が極端に大きいことが分かります。SOMPOはFY2024以降の経常利益タグが取得できず、5年CAGRは算出困難です。

FY2026を含めて3社を横並びで比較できる唯一の損益指標が税引前利益です。

税引前利益(億円)FY2025FY2026変化率
東京海上14,5027,507−48.2%
MS&AD9,0737,035−22.5%
SOMPO3,3028,432+155.4%

FY2025は東京海上がSOMPOの4.4倍でしたが、FY2026では3社が7,000〜8,400億円台に収斂し、SOMPOが最大となる逆転が起きています。SOMPOはFY2025から新基準ベースで、東京海上・MS&ADはFY2026から基準が変わった可能性が高いため、この「逆転」は事業実態の変化というより移行時期のズレを映したものと考えるのが自然です。実効税率はFY2026で東京海上23.8%、MS&AD26.6%、SOMPO23.8%と大きな差はありません。

4. 収益構造:資産運用が利益の過半を担う

細目が揃う最新期(東京海上・MS&ADはFY2025、SOMPOはFY2023)で二本柱を比較します(単位:億円)。

項目東京海上 FY2025MS&AD FY2025SOMPO FY2023
保険引受収益62,75554,00540,907
保険引受費用49,93345,79435,979
保険引受純益12,8218,2114,927
資産運用収益19,88611,9933,257
資産運用費用5,4462,5711,137
資産運用純益14,4409,4222,119
営業費及び一般管理費14,0138,4605,984
資産運用純益比率53.0%53.4%30.1%

※資産運用純益比率=資産運用純益÷(保険引受純益+資産運用純益)

東京海上・MS&ADはいずれもFY2025時点で利益源の過半が資産運用側です。東京海上の資産運用純益比率はFY2022の44.7%から53.0%へ、MS&ADはFY2022に69.8%と極端に運用偏重だったものが53.4%へ「引受側の回復によって」低下しました。

引受採算の改善度合いは正味収入保険料に対する保険引受純益率で見ると明瞭です。東京海上は20.7%(FY2022)→21.7%(FY2023)→24.2%(FY2025)、MS&ADは9.0%→10.6%→17.6%。MS&ADの改善幅(+8.6ポイント)が3社中で最も大きく、収益性の絶対水準では東京海上が依然リードしています。SOMPOはFY2022の17.3%からFY2023に13.4%へ低下した後の推移が追えません。

構造的な示唆:損保の利益が「引受」と「運用」の二本柱であること自体は従来から変わりませんが、FY2025時点で運用側が5割超を占める状態は、利益の変動性が保有資産の売却タイミングに左右されやすいことを意味します。次章以降で、その中身が利息配当金なのか売却益なのかを分解します。

5. 保険引受費用の内訳:損害率は5割台前半で安定

保険引受費用の内訳(億円)東京海上 FY2025MS&AD FY2025
正味支払保険金27,65824,890
損害調査費1,9382,428
諸手数料及び集金費10,1808,907
支払備金繰入額1,9693,133
責任準備金等繰入額
保険引受費用 合計49,93345,794
簡易損害率52.1%53.2%
諸手数料率19.2%19.1%

※簡易損害率=正味支払保険金÷正味収入保険料、諸手数料率=諸手数料及び集金費÷正味収入保険料。いずれも各社開示の損害率・事業費率とは定義が異なります。なお開示ベースのコンバインドレシオは提供データからは算出困難です。

簡易損害率はFY2022→FY2023→FY2025で東京海上50.3%→51.3%→52.1%、MS&AD53.9%→57.0%→53.2%、SOMPOは49.3%→53.1%。FY2023にMS&ADとSOMPOが3〜4ポイント悪化した後、MS&ADはFY2025に53.2%まで戻しており、経常利益の反転はこの損害率改善と整合します。諸手数料率は3社いずれも19%台でほぼ横並びであり、代理店手数料の水準に大きな格差はないことが読み取れます。

特徴的なのは支払備金繰入額で、MS&ADはFY2023の1,254億円からFY2025に3,133億円へ2.5倍。東京海上は2,978億円→1,969億円へ減少しており、両社で方向が逆です。責任準備金等繰入額はFY2025で両社とも「-」であり、繰入と戻入の関係を含めた分析は提供データからは困難です。営業費及び一般管理費を正味収入保険料で割ると東京海上26.4%、MS&AD18.1%と差が大きく、連結範囲(海外子会社の費用構造)の違いが反映されている可能性があります。

6. 資産運用分析:利息配当金の伸びと売却益の一巡リスク

項目(億円)東京海上 FY2025MS&AD FY2025東京海上 FY2023MS&AD FY2023SOMPO FY2023
利息及び配当金収入10,0034,9516,9043,4542,414
有価証券売却益8,4225,6161,8451,959755
有価証券売却損2,951518634656586
有価証券売却純益5,4705,0971,2101,303168
資産運用純益14,4409,4226,7145,5002,119
売却純益依存度37.9%54.1%18.0%23.7%7.9%

利息及び配当金収入はFY2022→FY2025で東京海上が5,600億円→10,003億円(CAGR +21.3%)、MS&ADが3,026億円→4,951億円(同+17.8%)。運用資産の積み上がりと利回り環境の変化の双方が寄与したと考えられますが、要因分解は提供データからは不可能です。

より注目すべきは売却純益依存度の急上昇です。MS&ADは資産運用純益の54.1%が有価証券売却純益であり、経常利益9,289億円に対して売却純益5,097億円は55%相当。東京海上も37.9%と、FY2023の18.0%から倍増しています。これは政策保有株式の削減など資本効率改善策の進行を映している可能性が高く、その場合は構造的に反復しない利益である点に留意が必要です。東京海上は売却損2,951億円も同時に計上しており、ポートフォリオ入替を伴う売却が含まれると見られます。

7. B/S分析:負債構造の違いが浮かび上がる

項目(億円)東京海上 FY2025MS&AD FY2025SOMPO FY2023
総資産312,373262,412144,602
有価証券192,629177,60098,081
有価証券/総資産61.7%67.7%67.8%
貸付金31,4039,0984,841
買入金銭債権30,5193,013219
金銭の信託0.126,633212
責任準備金等177,671162,52177,365
支払備金54,11533,01123,823
価格変動準備金1,5042,5171,108
有価証券評価差額金8,68913,9245,879
為替換算調整勘定11,8684,063548

運用資産の構成に個性が出ています。東京海上は貸付金3.1兆円・買入金銭債権3.1兆円で計約2兆円超(総資産比19.8%)を有価証券以外の収益資産に配分し、金銭の信託はほぼゼロ。対してMS&ADは金銭の信託2.7兆円(同10.1%)を活用し、貸付金は9,098億円と小さい。同じ「損保」でも運用手段の選択が異なります。

負債側では支払備金の重さが対照的です。正味収入保険料に対する支払備金の比率は東京海上102.0%、MS&AD70.6%。東京海上のほうが支払完了までの期間が長い種目(海外の賠償責任保険など)の構成比が高い可能性があります。支払備金はFY2022→FY2025で東京海上が36,096億円→54,115億円(+49.9%)、MS&ADが24,676億円→33,011億円(+33.8%)と大幅に増加しており、規模拡大と支払単価上昇の双方が働いていると考えられます。

有価証券評価差額金は東京海上が18,356億円→9,546億円→8,689億円へ半減。MS&ADは15,651億円→12,165億円→13,924億円で持ち直しています。含み益の実現(売却)が評価差額金の減少と売却純益の増加として同時に現れており、第6章の分析と符合します。為替換算調整勘定は東京海上が1,103億円→11,868億円へ10倍以上に膨張し、海外事業の資産規模の大きさを裏づけています。

8. キャッシュフローと株主還元:FY2026は総還元1.4兆円超

FY2026の比較です(単位:億円)。

項目東京海上MS&ADSOMPO
営業CF13,9059,5407,064
投資CF−4,027−7,195−2,329
財務CF−6,420−1,387−4,126
自社株取得−2,515−2,214−2,292
総還元額6,2704,4633,693
総還元額/純利益118.0%87.4%57.7%
営業CF/純利益2.62倍1.87倍1.10倍

3社合算の営業CFは30,509億円、総還元額は14,426億円。純利益が会計基準変更で圧縮された可能性がある一方、還元額は据え置かれた(あるいは増額された)ため、東京海上の総還元額/純利益は118.0%と100%を超えています。純利益ベースの還元率は基準変更の影響を受けやすく、営業CFに対する還元比率(東京海上45.1%、MS&AD46.8%、SOMPO52.3%)で見るほうが安定した比較になります。

営業CFの累計(FY2022〜FY2026)は東京海上59,173億円、MS&AD25,943億円。東京海上は毎期1兆円超を安定的に創出しているのに対し、MS&ADはFY2022の2,367億円からFY2026の9,540億円へ段階的に増加しており、キャッシュ創出力の格差が縮小しつつあります。

東京海上とMS&ADのFY2022〜FY2025の「総還元額」は自己株式取得額と同額であり、配当金支払額が捕捉されていない可能性があります。時系列での還元額比較はFY2026を基準に読むべきです。

9. 1株当たり指標と配当政策:株式分割の調整が不可欠

3社はいずれも1:3の株式分割を実施しており(東京海上FY2023、MS&ADFY2024、SOMPOFY2025)、分割前の1株当たり指標を分割後と直接比較することはできません。分割調整後の値を併記します。

社/期開示EPS分割調整後EPS開示配当分割調整後配当
東京海上 FY2022613.46204.49255.0085.00
MS&AD FY2022474.52158.17180.0060.00
MS&AD FY2023299.8099.93200.0066.67
SOMPO FY2022644.24214.75210.0070.00
SOMPO FY2023270.6490.21260.0086.67

調整後で見ると、MS&ADのEPSは158.17→99.93(FY2023)→231.83(FY2024)→445.52(FY2025)と、FY2023を底に4.5倍化。SOMPOも90.21(FY2023調整後)→250.90(FY2025)→701.03(FY2026)と大幅な回復です。MS&ADのFY2024開示配当270.00円は、分割の実施時期との関係で分割前基準の可能性があり、その場合の調整後は90.00円相当となります。FY2025の145.00円との比較で「大幅減配」に見えるのは分割の影響と考えられ、実質は増配です。

指標東京海上MS&ADSOMPO
EPS FY2025542.16445.52250.90
EPS FY2026279.35342.98701.03
希薄化後EPS FY2026279.15342.94701.03
1株配当 FY2025172.00145.00132.00
1株配当 FY2026218.00160.00150.00
配当性向 FY202678.0%46.7%21.4%
配当性向 FY202531.7%32.5%52.6%

配当は3社すべてFY2025→FY2026で増額(東京海上+26.7%、MS&AD+10.3%、SOMPO+13.6%)。一方で配当性向はEPSの基準変更に振られており、東京海上78.0%とSOMPO21.4%の差は還元方針の差というより会計基準移行のタイミング差を映していると考えられます。希薄化後EPSと基本EPSの差は3社いずれも0.2円以内で、潜在株式による希薄化はほぼ無視できる水準です。

10. 業績予想と第1四半期進捗

項目東京海上MS&ADSOMPO3社計
通期純利益予想(億円)8,3004,2504,90017,450
FY2027 Q1 純利益(億円)2,6433,2861,8117,740
進捗率31.8%77.3%37.0%44.4%
Q1 税引前利益(億円)3,7814,4092,40310,593
Q1 実効税率24.1%25.2%24.3%
Q1 EPS(円)138.25226.84203.14

東京海上(31.8%)とSOMPO(37.0%)は四半期均等ペース(25%)を上回る順調な立ち上がりです。際立つのはMS&ADの77.3%で、通期予想の8割弱をQ1で計上しています。損保の四半期損益は自然災害の発生時期や有価証券売却の実行時期に大きく左右されるため、この高進捗が期初の一過性要因によるものか、予想が保守的に置かれているのかは、提供データからは判別できません。四半期の細目タグが全社「-」であるため、要因分解も不可能です。

純資産はQ1末で東京海上83,231億円(FY2026末比+3.4%)、MS&AD67,304億円(+3.8%)、SOMPO54,223億円(+2.5%)と全社積み上がり、純資産比率(純資産÷総資産)は東京海上24.7%、MS&AD22.3%、SOMPO28.7%。J-GAAP時代の自己資本比率(FY2022で13〜15%台)とは定義・基準が異なるため、時系列での接続比較はできません。

11. 今後の注目点(定性的考察)

海外事業とのれん:東京海上の無形資産はFY2025の11,581億円からFY2026に15,798億円へ増加し、のれんはFY2022の4,534億円からFY2025に3,184億円へ減少しています。償却の進行と新規取得・為替換算の綱引きが起きている可能性があります。為替換算調整勘定が東京海上で11,868億円(FY2025)に達する一方、SOMPOはFY2023時点で548億円と小さく、海外エクスポージャーの規模差が資本の変動要因の差につながると見られます。MS&ADのFY2026投資CF-7,195億円は3社最大で、資産・事業への資金投下が続いている可能性があります。

会計基準移行:SOMPOはFY2025から、東京海上・MS&ADはFY2026から開示体系が変化したと見られ、少なくとも1〜2年は「基準を跨いだ利益比較」が困難になります。読者としては、純利益や配当性向といった基準変更に敏感な指標より、営業CF・正味収入保険料・支払備金といった相対的に基準変更の影響を受けにくい項目を軸に据えるのが実務的でしょう。なお経済価値ベースのソルベンシー指標については、提供データに含まれないため本稿では扱いません。

自然災害リスク:正味支払保険金は東京海上でFY2022の19,553億円からFY2025の27,658億円へ+41.4%、MS&ADで19,469億円→24,890億円へ+27.8%。増収に伴う自然増と災害コストの双方が含まれると考えられますが、区分は不可能です。価格変動準備金は東京海上1,504億円、MS&AD2,517億円(FY2025)と、有価証券残高(17〜19兆円規模)に比べれば緩衝力は限定的であり、有価証券評価差額金の増減が資本の主要な変動要因になり続ける可能性があります。

12. 総括

まとめ
- **業界全体**:3社合算純利益はFY2022の9,079億円→FY2026の16,818億円(CAGR +16.7%)。総資産は66.1兆円→81.2兆円(CAGR +5.3%)。純資産はFY2026に19.8兆円へ約48%増加したが、会計基準変更の影響と見られる。 - **東京海上**:規模・収益性の両面でトップ。保険引受純益率24.2%(FY2025)は3社最高、営業CFは5期連続1兆円超。支払備金/正味収入保険料102.0%と負債デュレーションが長く、為替換算調整勘定11,868億円が示す海外比重の大きさが特徴。FY2026の総還元額6,270億円は純利益の118%。 - **MS&AD**:最も改善幅が大きい。保険引受純益率は9.0%(FY2022)→17.6%(FY2025)へ+8.6ポイント。ただし資産運用純益の54.1%が有価証券売却純益であり、利益の反復性に留意。金銭の信託2.7兆円という運用手段の個性も。FY2027 Q1進捗率77.3%は3社で突出。 - **SOMPO**:基準移行が最も早く、FY2026税引前利益8,432億円(+155.4%)・純利益6,400億円(+163.3%)で3社最大の増益率。純資産比率28.7%(FY2027 Q1)は3社最高だが、配当性向21.4%と還元余地の評価は基準変更後の推移待ち。 - **共通する構造変化**:FY2025時点で東京海上・MS&ADはともに利益の53%が資産運用由来。含み益の実現による一時的な押し上げが含まれる可能性が高く、利息及び配当金収入(東京海上CAGR +21.3%、MS&AD +17.8%)という反復性のある部分がどこまで残るかが今後の焦点。

本稿で算出できなかった項目:SOMPOのFY2024以降および東京海上・MS&ADのFY2026の損益細目、開示ベースのコンバインドレシオ、経済価値ベースのソルベンシー指標、セグメント別損益。いずれも提供XBRLデータに含まれないため、推計を行っていません。

本記事はTDnet公開の決算短信(XBRL)データに基づく財務分析です。 特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

用語集

正味収入保険料: 収入保険料から再保険料を控除した、損害保険会社の実質的な売上高に相当する指標。事業規模の基本尺度として用いられる。

保険引受純益: 保険引受収益から保険引受費用を差し引いた金額。本業である保険引受活動から生じた利益を示す(本稿ではXBRLの各項目から算出)。

資産運用純益: 資産運用収益から資産運用費用を差し引いた金額。利息配当金収入、有価証券売却損益、減損などの純額。

責任準備金: 将来の保険金支払いに備えて積み立てる負債。未経過保険料や払戻積立金などを含み、損保のB/Sで最大の負債項目となる。

支払備金: 既に発生した事故のうち、決算日時点で支払いが完了していない保険金の見積額を計上する負債。長期にわたる賠償責任保険などで大きくなる。

価格変動準備金: 保険業法に基づき、株式等の価格変動による損失に備えて積み立てる準備金。資本のバッファー的機能を持つ。

有価証券評価差額金: その他有価証券の時価と取得原価の差額を、税効果調整後に純資産に直接計上した項目。売却により実現すると損益に振り替わり、この勘定は減少する。

為替換算調整勘定: 在外子会社の財務諸表を円換算する際に生じる差額を純資産に計上した項目。海外事業比重が高い企業で残高が大きくなる。

簡易損害率: 本稿独自の便宜的指標で、正味支払保険金÷正味収入保険料。各社が開示する損害率(損害調査費を含む定義)とは異なる。

実効税率: 法人税等÷税引前利益で算出される実際の税負担率。海外事業比率や税額控除の影響で法定実効税率と乖離する。

総還元額: 配当金支払額と自己株式取得額の合計。株主に還元されたキャッシュの総額を示す。

株式分割調整後EPS: 株式分割による株数増加を遡って反映したEPS。1:3分割の場合、分割前のEPSを3で割ることで分割後と比較可能になる。

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