- 純利益に種類があることと、その名前の違い
- 個別決算の当期純利益と、連結決算の親会社株主に帰属する当期純利益の関係
- 非支配株主とは何か、どのように利益を分けるのか
- 具体的な数字を使った計算の流れ
- どの純利益を投資判断で使うべきかの基準
- 指標やバリュエーションとのつなげ方(PERなど)
- 初心者が誤解しやすいポイントの回避方法
概念の説明
まず「純利益」とは、会社が一年で稼いだお金から、費用や税金などをすべて引いた最後の利益のことです。家計でいえば、給料から生活費や税金を払ったあとに手元に残る可処分所得に近いイメージです。
ここで重要なのは、同じ「純利益」という言葉でも、見る資料によって指す数字が違う点です。大きく分けて二つあります。
- 当期純利益(個別決算の純利益): 親会社単体だけの結果。たとえば親会社の家計簿だけを見るイメージです。
- 親会社株主に帰属する当期純利益(連結の純利益): 親会社と子会社グループ全体の結果から、他の株主に属する取り分を引いて、親会社の株主の分だけを示した数字。大家族の家計簿をまとめた後で、親戚の取り分を差し引き、親家族の取り分だけを示す感覚です。
会社が子会社を持っていない場合は、両者はほぼ同じになります。しかし、多くの上場企業は複数の子会社や関連会社を持っているため、数字が大きく違うことがあります。
なぜ重要なのか
投資家が株価を評価する時、しばしばPERのように「株価 ÷ 一株あたり利益」を使います。この時の利益は、通常は連結決算の「親会社株主に帰属する当期純利益」を基準にします。なぜなら、株価は親会社の株主のものだから、比べる利益も親会社の株主に帰属する分にそろえる必要があるためです。
また、会社の実力を見るにはグループ全体の稼ぐ力が欠かせません。個別の当期純利益だけでは、子会社の好不調や海外事業の影響が見えません。連結の数字は、グループ全体を一つの企業のように捉えているので、実態に近い評価ができます。
一方で、配当の原資や税務、社内の資金制約を考える際には、個別の当期純利益や個別の内部留保が重要になる場面もあります。目的によって、どの純利益を見るかを切り替えることが、正しい判断への近道です。
計算方法
純利益に至る基本の流れを、できるだけシンプルにたどってみます。家計の例えでいえば、収入から必要経費や税金を引いて手取りを出す流れです。
売上高 − 売上原価 = 売上総利益 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 = 営業利益 営業利益 ± 営業外収益・費用 = 経常利益 経常利益 ± 特別利益・損失 = 税引前当期純利益 税引前当期純利益 − 法人税等 = 当期純利益(連結ベースの合計) 当期純利益 − 非支配株主に帰属する当期純利益 = 親会社株主に帰属する当期純利益ポイントは最後の二行です。連結の「当期純利益」はグループ全体の合計ですが、そのうち親会社が全てを所有していない子会社があれば、他の株主の取り分が含まれています。これを「非支配株主の利益」と呼び、親会社に属さない分を差し引いた残りが、親会社の株主のための利益です。
具体例・ケーススタディ
- ケース1 単独会社の場合
- 親会社が子会社を持たないとします。
- 税引前当期純利益が1,000、法人税が300なら、当期純利益は700です。
- 非支配株主の取り分はゼロなので、親会社株主に帰属する当期純利益も700のままです。
- ケース2 子会社を80パーセント保有するグループの場合
- グループ全体の税引前当期純利益が1,500、法人税が450だとします。まず連結の当期純利益は1,050です。
- そのうち、子会社の当期純利益が500、親会社の当期純利益が550としましょう。
- 親会社は子会社を80パーセント保有しています。子会社の利益500のうち、80パーセントの400が親会社側、20パーセントの100が非支配株主側の取り分です。
- よって、親会社株主に帰属する当期純利益は、親会社本体の550と子会社の取り分400を合わせて950です。
- 残りの100が非支配株主に帰属する当期純利益となります。
このように、グループ全体の純利益から、他の株主の取り分を丁寧に分けることで、親会社の株主にとっての最終利益が決まります。
実践的な活用法
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株価の割安感を測る
- PERを使う場合は、分母の利益に「親会社株主に帰属する当期純利益」を用いるのが基本です。株主が手にする価値と対応するからです。
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一株あたり利益 EPS を確認する
- EPSは親会社株主に帰属する当期純利益を発行済み株式数で割ったものです。企業が公表するEPSは通常、連結ベースで算出されています。
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配当の持続性を見る
- 配当原資の見立てには、連結の利益だけでなく個別の当期純利益や個別の利益剰余金も確認します。法律上の配当可能額は個別決算に基づくためです。連結で好調でも、個別が弱いと配当余力に制約が出ることがあります。
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M&Aや海外子会社比率が高い企業の把握
- 非支配株主の取り分が大きい企業は、連結の当期純利益が伸びていても、親会社株主の取り分は伸びにくいことがあります。利益の伸び方と取り分のバランスをチェックしましょう。
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ボラティリティの源泉を探る
- 子会社の一過性損益や為替の影響が連結に反映されます。セグメント情報と合わせて、どこで利益が動いたのかを見極めるのに役立ちます。
よくある誤解
まとめ
用語集
当期純利益: 一定期間の収益から費用と税金をすべて差し引いた最終的な利益。個別決算では親会社単体の数字、連結決算ではグループ合計の最終利益を指す。
親会社株主に帰属する当期純利益: 連結の当期純利益から、非支配株主に帰属する取り分を差し引き、親会社の株主に属する最終利益だけを示した数字。
連結決算: 親会社と子会社を一体の企業として集計し、グループ全体の業績を示す決算。内部取引の相殺や持分の按分を行う。
個別決算: 親会社や各子会社など、単独の会社ごとの決算。法的な配当可能額の計算などに用いられる。
非支配株主: 親会社が100パーセントを保有していない子会社において、親会社以外の株主。連結の利益の一部がこの株主に帰属する。
EPS: 一株あたり利益。親会社株主に帰属する当期純利益を発行済み株式数で割った指標。
PER: 株価収益率。株価を一株あたり利益で割った指標で、株価が利益に対して割高か割安かをおおまかに見る。