基本の指標入門
損益計算書(P/L)の見方
損益計算書の基本的な構造をやさしく解説し、売上高から純利益に至るまでの流れを、日常の例えや具体的な数値で学べます。
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P/L財務諸表
目次
損益計算書は、ある期間に会社がどれだけ稼ぎ、どれだけお金を使い、最終的にいくら残ったかを示す家計簿のようなものです。家庭でいえば、給料や副収入が入り、食費や光熱費を払い、最後に貯金が増えたかどうかを見る流れに似ています。
上から下へと数字が流れるのが特徴で、川の流れのように段階を下るほど、お金が目減りしていきます。最初に売上高という大きな水たまりがあり、そこから原価、費用、税金などを差し引いた残りが純利益になります。
中でもよく使う区切りが三つあります。粗利益 つまり売上総利益 は、売るために直接かかったコストを引いた利益。営業利益は、会社の本業で稼いだ力を示す利益。純利益は、最終的に株主の取り分に近い利益です。名前は難しそうですが、どこまでの費用を引いたかの違いだと捉えると分かりやすくなります。
たとえば、お祭りでかき氷を売るとします。氷とシロップの代は原価、屋台のレンタル代や宣伝費は販管費、本業以外の利息収入は営業外収益、最後に払う税金を引けば純利益という具合です。
投資家は、会社が本業で安定して稼げているか、本業以外の偶然に頼っていないかを知りたいものです。損益計算書は、その答えを段階的に見せてくれます。売上が伸びているのに利益が増えないなら、原価や費用が重いのかもしれません。逆に売上が横ばいでも、費用をうまく抑えて利益が伸びていれば、経営の工夫が効いていると考えられます。
また、損益計算書は株価の材料にもなります。将来の利益が増える見込みが高い会社は、株式市場で高く評価されやすいからです。ただし一時的な特別利益で純利益が跳ねているだけだと、翌年は続かない可能性があります。利益の質を見分けるためにも、段階ごとの数字を追うことが大切です。
さらに、同じ業界内での比較にも役立ちます。たとえば食品メーカー同士なら、原価率の低さや販管費の効率で差が出ます。業界が違えば構造も違うため、同業他社と並べて傾向を掴むのがコツです。
損益計算書は上から下へ、次の順番で計算されます。式はシンプルですが、どの費用を差し引いた段階かを意識しましょう。
それぞれの基本式は次の通りです。
売上総利益 GrossProfit = 売上高 NetSales - 売上原価 Cost of Goods Sold 営業利益 OperatingIncome = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費 Selling General and Administrative expenses 税引前利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 + 特別利益 - 特別損失 当期純利益 NetIncome = 税引前利益 - 法人税等ステップバイステップの小さな例
例A 日常の屋台 1 売上高 1,000円 2 売上原価 氷とシロップ 400円 3 粗利益 1,000 - 400 = 600円 4 販管費 屋台代と広告 300円 5 営業利益 600 - 300 = 300円 6 営業外費用 借入の利息 20円 特別損失 なし 7 税引前利益 300 - 20 = 280円 8 法人税等 28円 仮に10パーセントとする 9 当期純利益 280 - 28 = 252円
例B 小売店の値引き 1 売上高 2,000円 値引き後 2 売上原価 1,200円 3 粗利益 800円 4 販管費 700円 倉庫や人件費など 5 営業利益 100円 本業の儲けが薄い 6 営業外収益 50円 有価証券の利息 7 税引前利益 150円 本業外が補っている 8 税金 15円 仮に10パーセント 9 当期純利益 135円
ケース 社名は仮名 フードスマイルの3年間
前提 単位は億円
1年目 売上高 1,000 売上原価 600 原価率60パーセント 粗利益 400 販管費 300 営業利益 100 営業利益率10パーセント 営業外収益 5 営業外費用 10 税引前利益 95 法人税等 28 仮に約30パーセント 当期純利益 67
2年目 値上げと省エネ投資が奏功 売上高 1,050 売上原価 595 原価率56.7パーセントに改善 粗利益 455 販管費 305 営業利益 150 営業外収益 3 営業外費用 10 税引前利益 143 法人税等 43 当期純利益 100
3年目 特別利益があるが本業は横ばい 売上高 1,060 売上原価 600 粗利益 460 販管費 310 営業利益 150 本業は据え置き 営業外収益 4 営業外費用 10 特別利益 50 不動産売却 税引前利益 194 法人税等 58 当期純利益 136
読み取りのポイント
まずは段階ごとにチェック 1 売上高が伸びているか 2 粗利益率 粗利益 割る 売上高 が安定または改善しているか 3 営業利益が継続的に増えているか 4 純利益の増減が特別要因によるものではないか
コスト構造をつかむ 原価が高止まりしていないか 物流や原材料の高騰が影響していないか を確認します。販管費が売上に対して重くなっていれば 人件費や広告戦略の見直し期かもしれません。
業界比較で位置づける 同業他社の粗利益率 営業利益率と比べて 会社の強み 弱みを把握します。ブランド力がある会社は値下げに頼らず粗利益率が高い傾向があります。
四半期ごとの流れを追う 季節要因のある業種 小売 外食など は四半期で比較します。前年同四半期比で売上や利益の方向性を見ましょう。
指標との連携 収益力は株価指標とも関連します。たとえばEPS 一株当たり利益 は純利益から計算されます。P E R 株価収益率 を読むときも 純利益の持続性の評価が重要です。
NetSales: 売上高 会社が商品やサービスを販売して得た合計の金額 値引きや返品を考慮した後の純額のことが多い
GrossProfit: 売上総利益 粗利益 売上高から売上原価を差し引いた利益 商品そのものの儲けに近い
OperatingIncome: 営業利益 本業で稼いだ利益 粗利益から販売費及び一般管理費を引いたもの
NetIncome: 当期純利益 税金などを差し引いた最終的な利益 株主の取り分に近い概念
売上原価: 商品を作る 仕入れるために直接かかる費用 原材料費 仕入代 運搬の一部など
販売費及び一般管理費: 販売活動や会社運営にかかる費用 広告費 人件費 家賃 光熱費など
営業外収益: 本業以外で得た収入 受取利息 受取配当金など
営業外費用: 本業以外で発生した費用 支払利息 為替差損など
特別利益: 毎年は起きない臨時のプラス要因 固定資産売却益など
特別損失: 毎年は起きない臨時のマイナス要因 災害損失など
法人税等: 会社が利益に対して支払う税金の合計