将来設計高校生向け
生涯収入を考える|学歴・職業による差を知ろう
高校生のうちに知っておきたい、生涯収入の基礎。学歴や職業の違いが収入にどう影響するかを、数字と具体例でやさしく解説します。
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キャリア年収高校生
目次
学歴の違いは、スタート時期とスタート時の年収に影響します。高卒で早く働けば収入は早く得られますが、初任給はやや低めになりがち。一方、大学に進学すると働き始めは遅くなりますが、初任給や将来の昇給幅が大きい職種を選べる可能性が上がります。これを、将来の収入を増やすために自分に投資するという意味で「ヒューマンキャピタルの投資」と呼ぶこともあります。
さらに、職業や産業、保有スキルによっても収入は変化します。同じ学歴でも、情報系エンジニア、看護師、建設技能職、公務員、営業職などで年収のカーブは異なります。残業や夜勤手当、資格手当の有無も影響します。
最後に忘れがちなのが、手取り(可処分所得)です。給料からは税金や社会保険料が引かれます。額面の年収が同じでも、扶養や住む自治体、年齢で手取りは変わります。家計感覚では、手取りベースで比較するとイメージしやすくなります。
また、若い時期の選択は長い期間の複利効果につながります。例えば、18歳からの少額の積立投資や、在学中のインターン、資格学習などは、早く始めるほど効果が積み上がります。逆に、十分な情報がないまま選ぶと、後からの軌道修正に時間と費用がより必要になることもあります。
さらに、社会科で学ぶ労働市場の仕組みとも関係します。需要が高いスキルの人材には賃金が集まりやすく、供給が多い職種では賃金は上がりにくい傾向があります。公的な安全網(雇用保険や奨学金制度、税制上の控除)を理解すると、将来設計の安心材料になります。
ステップ1: 就業年数を決める 例)18歳から65歳まで働くと47年。大学進学で22歳から働くと44年。
ステップ2: 年代ごとの平均年収を仮置きする 例)20代前半は低め、30代で伸び、40〜50代でピーク、60代はやや下がる、といったカーブを設定。
ステップ3: 各期間の年収を合計する 足し算で生涯の総額を出す。
生涯収入 = 年収1 + 年収2 + ... + 年収nステップ4: 手取りの目安を出す 税金と社会保険料を引いた手取りを大まかに年収の80%程度で置く(若手の目安)。
手取りの目安 = 年収 × 0.8ステップ5: 進学コストと機会費用を考慮する 学費と、進学している間に働けなかった分の収入差を差し引く。
進学の総コスト ≒ 学費の合計 + (高卒で働いた場合の収入 − 大学生のバイト収入)ステップ6: 奨学金の返済を考える 借入総額と利息に応じて、毎月の返済額を生活計画に組み込む。
ケースA: 高校卒業後に18歳から就職 年代別年収の仮置き ・18〜21歳: 240万円 ×4年 = 960万円 ・22〜29歳: 300万円 ×8年 = 2,400万円 ・30〜39歳: 380万円 ×10年 = 3,800万円 ・40〜49歳: 450万円 ×10年 = 4,500万円 ・50〜59歳: 500万円 ×10年 = 5,000万円 ・60〜65歳: 400万円 ×6年 = 2,400万円 合計: 1億9,060万円 手取りの目安(80%): 約1億5,248万円
ケースB: 大学進学(4年)後、22歳から就職(学費は国公立想定) 学生期間のキャッシュフロー(4年) ・学費: 年100万円 ×4年 = 400万円 ・バイト収入: 年80万円 ×4年 = 320万円 ・奨学金: 200万円借入(返済あり) 社会人の年収(22〜65歳) ・22〜29歳: 350万円 ×8年 = 2,800万円 ・30〜39歳: 450万円 ×10年 = 4,500万円 ・40〜49歳: 550万円 ×10年 = 5,500万円 ・50〜59歳: 600万円 ×10年 = 6,000万円 ・60〜65歳: 450万円 ×6年 = 2,700万円 合計: 2億1,500万円 手取りの目安(80%): 約1億7,200万円
機会費用と差の整理 ・機会費用(進学で得られなかった収入 − バイト収入) 高卒で18〜21歳に得られた収入960万円 − バイト320万円 = 640万円 ・学費: 400万円 ・奨学金返済: 元本200万円(利息は制度により変動。ここでは合計220万円の返済と仮定) ・ケースBの生涯収入差: 2億1,500万円 − 1億9,060万円 = 2,440万円 ・進学コストの合計(概算): 640万円 + 400万円 + 220万円 = 1,260万円 ・最終差(概算): 2,440万円 − 1,260万円 = 1,180万円(ケースBが有利)
この試算では大学進学が有利という結果ですが、これはあくまで平均的な仮定です。専門学校や短大、理系・医療系、IT資格取得、地域差、インフレ、転職や昇進の成否、離職期間の有無で結果は変わります。重要なのは、数字で比較する習慣を持つことです。
進路研究のコツ ・公的データを使う: 賃金構造基本統計調査、学校基本調査、ハローワークの求人賃金などを確認。 ・職種別の年収カーブを知る: 医療・福祉、建設、情報通信、製造、金融、小売など、産業別の賃金水準をチェック。 ・資格と実務の対応関係: 例)看護師、電気工事士、宅地建物取引士、基本情報技術者など、資格の勉強がどの職種でどう収入に影響するかを調べる。
アルバイト収入の活かし方 ・時間給 × 勤務時間で月収を見える化。例)時給1,100円 × 60時間 = 月6万6千円。 ・家計の三分法で管理: 貯蓄3、自己投資3、生活4の配分など、自分のルールを決めて継続。
新NISAを使って「少額でも長く」 18歳から使える少額投資の非課税制度が新NISAです。利益に対する税金がかからないのがメリットで、長期の積立に向いています。例えば、月1万円を年3%で20年積み立てると、将来の合計は次のように計算できます。
毎月積立の将来価値 = 毎月の積立額 × ((1 + 年利÷12)^(積立月数) − 1) ÷ (年利÷12)年利3%、月1万円、240カ月の場合の概算 ・将来価値 ≈ 約329万円(拠出総額240万円、運用益約89万円) 年利5%なら ・将来価値 ≈ 約412万円(運用益約172万円) 金額は相場で上下しますが、非課税の効果と複利で「早く始めるほど有利」になりやすいのがポイントです。
リスクとセーフティネットを知る ・業界リスクの分散: 将来性のあるスキル(デジタル、語学、データ活用など)を組み合わせる。 ・保険や公的制度: 雇用保険、傷病手当金、教育訓練給付など、困った時に使える制度を把握。
生涯収入: 一生のあいだに働いて得る収入の合計。額面年収の合計を指すことが多い。
手取り(可処分所得): 税金や社会保険料を差し引いた後に実際に使えるお金のこと。
ヒューマンキャピタル: 知識や技能、健康など、人が持つ将来の稼ぐ力という資本を指す考え方。
機会費用: ある選択をしたために、他の選択で得られたはずの利益を失うこと。進学中に働けない収入など。
奨学金: 進学費用のために借りる資金や給付型の資金。貸与型は返済義務がある。
新NISA: 少額投資の利益が非課税になる制度。18歳以上が利用でき、長期の積立投資に適する。
複利: 利子が利子を生む効果。時間が長いほど増加効果が大きくなる。
インターンシップ: 企業や団体で就業体験をする制度。職業理解やスキル形成に役立つ。