基本の指標入門
貸借対照表(B/S)の見方
貸借対照表の基本構造と、資産・負債・純資産のつながりを初心者にも分かりやすく解説。家庭の家計にたとえながら、重要な比率や活用法、よくある誤解まで丁寧に紹介します。
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B/S財務諸表
目次
貸借対照表は、ある時点の会社の「持ち物リスト」です。左側にお金や建物などの「資産」、右側に返さなければならない「負債」と、持ち主の取り分である「純資産」が並びます。写真のように、その日の状態を一枚で切り取って見せてくれます。
家計にたとえると、資産は「預金・家・車」、負債は「住宅ローン・クレジットの未払い」、純資産は「資産から借金を引いた残り」です。たとえば預金と家が合計3000万円、ローンが2000万円なら、残り1000万円が家族の取り分、つまり純資産にあたります。
この表には必ず成り立つ基本式があります。資産の合計は、負債と純資産の合計に等しくなります。会社が持つものは、借りてきたお金か、株主などの持ち主から預かったお金のどちらかで賄われているからです。
さらに資産・負債は「すぐ現金になるもの(流動)」と「長く使うもの(固定)」に分かれます。来年までに動きやすいものか、何年もかけて使うものかで分けるイメージです。これにより、短期の支払い能力をチェックしやすくなります。
ここでは、まず基本の合計と、よく使う安全性の指標を手計算の手順で確認します。
基本式
総資産 = 総負債 + 純資産純資産の求め方(総資産と総負債が分かっている場合)
純資産 = 総資産 - 総負債流動比率(短期の支払い能力)
一般に100%を上回るほど、短期の支払いに余裕があると解釈されます。
自己資本比率(財務の安定度)
数字が高いほど、借金に過度に頼らずに運営できている状態です。
D/Eレシオ(負債依存度の目安)
1倍前後なら中立的、著しく高いと債務負担が重い可能性があります。業種で適正水準は異なります。
ネットキャッシュ(手元の余力)
ネットキャッシュ = 現金及び預金 - 有利子負債正の値なら、借入を差し引いても現金が余るイメージです。
仮の会社A社の貸借対照表を使って、計算と読み方を体験しましょう。
資産(合計2000)
負債(合計900)
純資産(合計1100)
チェック手順:
基本式の確認
総資産 2000 = 総負債 900 + 純資産 1100左右が一致しています。
流動比率(短期の支払い余力)
100%を十分に上回り、短期支払いに余裕があると読めます。
自己資本比率(財務の安定度)
自己資本比率 = 1100 ÷ 2000 × 100 = 55%借入に過度に依存していない、比較的健全な水準に見えます。
D/Eレシオ(負債依存度)
金利上昇の影響も比較的受けにくい構造と言えます。
ネットキャッシュ(手元の余力)
ネットキャッシュ = 現金700 - 有利子負債450 = 250現金が借入を上回っており、投資や配当の原資として柔軟性があります。
読み取りのポイント:
安全性の初期スクリーニング まず自己資本比率と流動比率を確認。自己資本比率が低下傾向、かつ流動比率が100%近辺だと、景気悪化で資金繰りが厳しくなるおそれがあります。
金利局面への耐性チェック 有利子負債が多い会社は、金利上昇で支払い利息が増え、利益を圧迫します。D/Eレシオやネットキャッシュで負担の重さを把握しましょう。
成長投資の余力を見る 現金が潤沢で、純資産が積み上がっている会社は、新規投資や買収に動きやすい傾向。固定資産の増加が売上拡大につながっているか、数年の推移で確認します。
同業他社との比較 業種により適正水準は異なります。例えば小売は在庫が多く、製造は固定資産が重く、ITサービスは固定資産が軽い傾向。同業の平均と比べて、過不足を判断します。
ノートや注記の確認 同じ「借入金」でも返済期限や金利条件はさまざま。注記に返済スケジュールが載っていることがあります。短期に偏っていると再調達リスクが上がります。
過去推移で「じわじわ変化」を追う 一年だけでなく3〜5年の総資産、総負債、純資産の流れを見ます。売上が横ばいなのに在庫だけ増えている、現金が減って借入が増えている、などは要注意です。
貸借対照表: ある時点の会社の財政状態を示す表。資産、負債、純資産で構成される。
資産: 会社が持つ価値のあるもの。現金、売掛金、在庫、設備など。
負債: 将来支払う義務のあるもの。買掛金、借入金、社債など。
純資産: 資産から負債を引いた残り。株主の取り分に相当する。
総資産 (TotalAssets): 資産すべての合計額。
総負債 (TotalLiabilities): 負債すべての合計額。
純資産 (NetAssets): 総資産から総負債を差し引いた金額。
流動資産: 1年以内に現金化されやすい資産。現金、売掛金、在庫など。
固定資産: 長期にわたり使う資産。建物、機械、ソフトウェアなど。
流動負債: 1年以内に支払う可能性が高い負債。買掛金、短期借入金など。
固定負債: 返済期限が1年を超える負債。社債、長期借入金など。
自己資本比率: 純資産を総資産で割った比率。財務の安定性の目安。
D/Eレシオ: 有利子負債を純資産で割った値。負債依存度の指標。
ネットキャッシュ: 現金及び預金から有利子負債を差し引いた残高。
有利子負債: 利息の支払いが必要な借入金や社債の合計。