| 指標 | 当期 | 前年同期 | YoY |
|---|---|---|---|
| 売上高 | ¥81058.9億 | ¥91902.2億 | -11.8% |
| 営業利益 | ¥2122.0億 | ¥1621.8億 | +30.8% |
| 経常利益 | ¥2296.5億 | ¥2147.6億 | +6.9% |
| 純利益 | ¥1434.3億 | ¥289.8億 | +395.0% |
| ROE | 7.4% | 1.7% | - |
2026年3月期決算は、売上高8兆1,058億円(前年比▲1兆843億円 ▲11.8%)と減収ながら、営業利益2,122億円(同+500億円 +30.8%)と大幅増益で着地した。経常利益2,296億円(同+148億円 +6.9%)、親会社株主帰属当期純利益1,434億円(同+1,144億円 +395.0%)と、営業段階から最終利益まで増益を達成した。売上減少は原油価格軟化等による価格要因が主因だが、粗利率9.3%(前年7.5%から+1.8pt)と精製マージンの改善により営業利益率は2.6%(同1.8%から+0.8pt)へ上昇した。特別利益では負ののれん発生益84億円(資源・燃料油の取得関連)等275億円を計上した一方、減損損失181億円や固定資産除却損115億円の特別損失350億円を計上したものの、前年の多額減損(272億円)から減損負担が軽減され純利益段階で大幅増益となった。
【売上高】売上高は8兆1,058億円(前年比▲11.8%)と減収。最大セグメントの燃料油が6兆8,072億円(同▲11.8%)と前年並みの減収率で推移し、原油価格の軟化と数量減少が影響した。基礎化学品は5,006億円(同▲21.2%)と市況下落で大幅減収、資源も2,035億円(同▲23.3%)と石炭・ガス価格の調整で縮小した。電力・再生可能エネルギーも1,005億円(同▲23.5%)と電力市況の正常化で減収。一方、高機能材は5,268億円(同▲0.7%)と堅調で、その他事業は241億円(同+31.4%)と保険事業等が拡大した。地域別では国内売上5兆5,572億円(前年6兆5,521億円)、シンガポール8,270億円(前年は合算で「アジア・オセアニア」1兆7,043億円)と開示区分が変更されたが、全体として国内・輸出とも価格要因で減少した。
【損益】売上原価は7兆3,514億円で粗利は7,544億円(粗利率9.3%)と前年6,894億円(粗利率7.5%)から+650億円改善した。販管費は5,422億円(販管費率6.7%、前年5,272億円・5.7%)と+150億円増加したが、売上減少を上回る粗利改善により営業利益は2,122億円(前年1,621億円、+30.8%)と大幅増益となった。セグメント別では燃料油の営業利益が1,750億円(同+61.5%)と精製マージン改善で急拡大、高機能材347億円(同+24.4%)も堅調、資源は291億円(同▲57.3%)と市況下落で減益、基礎化学品は▲73億円(赤字幅縮小)、電力・再エネは▲19億円(赤字幅縮小+83.2%改善)となった。営業外収益は449億円(前年727億円)で受取利息186億円や為替差益87億円を計上したが、前年の為替差益201億円から縮小した。営業外費用は274億円(前年201億円)で支払利息180億円を計上し、経常利益2,296億円(同+6.9%)は営業段階より伸びが鈍化した。特別利益は負ののれん発生益84億円(資源セグメントの豪州鉱山権益追加取得79億円、燃料油セグメントの富士石油取得4.9億円)や段階取得益81億円、投資有価証券売却益26億円等で275億円、特別損失は減損181億円(電力・再エネ97億円、燃料油36億円、高機能材33億円等)と固定資産除却損115億円等で350億円を計上した。税前利益2,221億円に対し法人税費用570億円(実効税率25.7%)、非支配株主利益▲68億円を差し引き、親会社株主帰属当期純利益1,434億円(同+395.0%)と増収減益の構図で決着した。
燃料油セグメントは売上6兆8,072億円(前年比▲11.8%)、営業利益1,750億円(同+61.5%)、利益率2.6%(前年1.4%)と粗利改善により収益性が大幅向上した。基礎化学品は売上5,006億円(同▲21.2%)、営業損失▲73億円(前年▲99億円)で赤字は縮小したが市況逆風は継続している。高機能材は売上5,268億円(同▲0.7%)と横ばいながら営業利益347億円(同+24.4%)で利益率6.6%(前年5.3%)へ改善し、非資源の収益柱として安定した。電力・再生可能エネルギーは売上1,005億円(同▲23.5%)、営業損失▲19億円(前年▲113億円)で赤字は大幅に縮小したが依然黒字化には至らず。資源は売上2,035億円(同▲23.3%)、営業利益291億円(同▲57.3%)で利益率14.3%(前年33.6%)と市況軟化により大幅減益となった。その他事業は売上241億円(同+31.4%)、営業利益9億円(同▲20.0%)で保険等の周辺事業が拡大した。全社調整後の営業利益は▲185億円で研究開発費等の本社費が計上されている。セグメント別利益寄与は燃料油が圧倒的で売上の83.4%・営業利益の82.5%を占める集中度の高い事業ポートフォリオとなっている。
【収益性】営業利益率2.6%(前年1.8%から+0.8pt改善)、親会社帰属純利益率1.8%(前年0.3%から+1.5pt改善)と、精製マージン改善と特別損失の減少により収益性は向上した。ROE7.4%(前年5.9%)は自社過去実績からは改善したが、資本効率は依然低位にとどまる。ROA(経常利益ベース)4.5%(前年4.4%)と小幅改善した。【キャッシュ品質】営業CFは3,924億円(前年4,767億円、▲17.7%)と減少したが、営業CF/純利益比率5.23倍(前年16.5倍)と利益の現金化は良好で、前年は特殊要因で営業CFが膨らんでいた反動である。営業CF/EBITDA1.27倍とキャッシュコンバージョンは高い。アクルーアルレシオ(営業CF-純利益)/総資産は+4.7%で利益とCFの乖離は小さく、会計利益の質は高い。【投資効率】総資産回転率1.52倍(前年1.92倍)と資産拡大により低下した。設備投資1,548億円は減価償却費959億円の1.61倍と成長投資を継続し、建設仮勘定も829億円(前年552億円)へ積み上がり来期以降の稼働寄与が期待される。【財務健全性】自己資本比率36.6%(前年36.0%)と横ばい、D/Eレシオ0.52倍(前年0.51倍)と有利子負債は微増した。流動比率126.1%(前年126.4%)と短期支払能力は維持されたが、当座比率67.6%(前年63.6%)は依然低く、現金及び預金2,123億円/短期負債2兆3,514億円=0.42倍と短期流動性は脆弱である。インタレストカバレッジ17.0倍(EBITDA3,081億円/支払利息180億円)と金利負担耐性は高い。棚卸資産回転日数68日(在庫1兆3,755億円/日商1,195億円)とやや滞留気味で、価格下落局面での評価損リスクには留意を要する。
営業CFは3,924億円(前年4,767億円、▲17.7%)と減少したが、税引前利益2,221億円(前年1,583億円)の増益を受け、営業CF小計(運転資本変動前)は4,101億円(前年5,592億円)となった。減価償却費959億円、のれん償却90億円、減損損失180億円を加算、持分法利益24億円を調整し、運転資本変動では棚卸資産の減少+440億円(前年+1,344億円)、売上債権の減少+1,125億円(前年+1,484億円)が資金流入に寄与した一方、仕入債務の減少▲335億円(前年▲215億円)が流出要因となった。法人税等の支払▲341億円、利息及び配当金の受取+346億円、利息の支払▲182億円を経て、営業CF3,924億円を創出した。投資CFは▲2,916億円(前年▲1,185億円)で、設備投資▲1,548億円(前年▲865億円)と積極投資に加え、子会社株式取得▲262億円、投資有価証券取得▲163億円等が流出したが、売却・回収で+57億円の流入もあった。フリーCFは1,008億円(前年3,582億円)と減少したが黒字を維持し、FCF/EBITDA0.32倍と一定の余力がある。財務CFは▲1,049億円(前年▲3,434億円)で、短期借入の純返済▲1,466億円、長期借入+1,215億円で調達と返済を調整し、配当▲441億円、自社株買い▲23億円を実施した。現金及び預金は期首1,657億円から期末2,123億円へ+465億円増加し、手元流動性は改善した。設備投資/減価償却1.61倍と成長投資を継続する一方、営業CFの範囲内で投資をファイナンスしておりキャッシュアロケーションは健全である。
営業利益2,122億円が経常的収益の中核であり、営業外収益449億円のうち受取利息186億円、為替差益87億円は市況・金利に左右される非経常的要素が一部含まれる。持分法投資利益24億円(前年226億円)は大幅減少し、資源市況の影響を受けた。一時的項目は特別利益275億円(負ののれん発生益84億円、段階取得益81億円、投資有価証券売却益26億円、固定資産売却益30億円)と特別損失350億円(減損損失181億円、固定資産除却損115億円)で、純額▲75億円の費用超過だが、前年の特別損失695億円(減損272億円等)から減損負担が大幅に軽減された結果、純利益段階で大幅増益となった。包括利益は2,428億円(当期純利益1,434億円に対し+994億円)で、為替換算調整額+597億円、退職給付調整額+72億円、持分法適用会社のOCI+60億円等が計上され、為替変動が包括利益の変動要因の主因である。営業CF3,924億円は純利益1,434億円の2.73倍で、アクルーアル(CF-純利益)は+2,490億円と減価償却等の非現金費用と運転資本変動が主因であり、会計利益の質は高い。経常利益2,296億円と純利益1,434億円の差は税金・特別損益(純額▲75億円)で説明でき、構造的な乖離は限定的である。総じて、営業段階の収益改善は精製マージン改善による持続性があり、特別損益は前年比で改善したが今後も一時的な振れが予想される。
2027年3月期(来期)の業績予想は、親会社株主帰属当期純利益750億円(実績1,434億円から▲47.7%減)、EPS62円(実績62円と横ばい)、年間配当18円(実績36円から半減)を計画している。実績対比で利益は大幅減益となるが、これは今期の特別利益(負ののれん・段階取得益等)が一時的要因であったことを織り込んだ保守的な前提と解される。営業利益等の詳細ガイダンスは開示されていないが、精製マージンの正常化と資源価格の調整を想定したベースラインと推察される。配当は通期で18円と今期の半分に減少する計画だが、これはEPS62円に対し配当性向29.0%と保守的水準で、循環業のキャッシュ配分を優先した方針と考えられる。進捗率は未開示のため評価対象外だが、来期の利益水準とキャッシュ創出力が配当持続性の鍵となる。
年間配当は36円(中間18円+期末18円)で、親会社株主帰属当期純利益1,434億円に対し配当性向は約46.3%(配当総額441億円/発行済株式数約12.2億株ベース)となり、前年の配当性向と同水準を維持した。自社株買いは23億円と軽微で、総還元性向は約46.5%となる。営業CF3,924億円、フリーCF1,008億円に対し配当総額441億円はFCFカバレッジ2.3倍と十分な支払余力がある。来期の配当予想18円(年間)は実績36円から半減する計画だが、来期の予想純利益750億円に対し配当性向は約29.0%と保守的水準に設定され、循環業のキャッシュフロー変動に備えた安定配当方針を示唆している。配当性向は中期的に30~50%レンジで運営される見込みであり、営業CF・EBITDAの拡大が持続すれば段階的な増配余地はあるが、当面は保守運営と判断される。自己株式取得は限定的で、配当中心の株主還元政策が継続する。
原油価格・精製マージンの変動リスク: 売上の83.4%を占める燃料油セグメントの営業利益は精製マージンに大きく依存し、原油価格や製品市況の変動が収益を直撃する。粗利率9.3%と前年から改善したが、市況逆風時には営業利益率2.6%が圧縮され、赤字転落リスクも内在する。在庫1兆3,755億円(総資産の25.8%)を抱えるため、価格下落局面では評価損や在庫調整が営業CF・利益を圧迫する懸念がある。
短期負債偏重による流動性・リファイナンスリスク: 短期負債2兆3,514億円(総負債の69.6%)に対し現金及び預金2,123億円で当座比率67.6%、現金/短期負債比率0.42倍と短期流動性は脆弱である。CPや短期借入の借り換えが困難化した場合、流動性危機に直面するリスクがあり、金融市場の変調や格付け低下が資金調達コストを押し上げる可能性がある。
資源市況と持分法投資のボラティリティ: 資源セグメントの営業利益は291億円(前年682億円から▲57.3%)と市況下落で急減した。持分法投資利益も24億円(前年226億円)と大幅減少し、石炭・ガス価格の変動が全社利益を左右する。資源価格の循環的調整が長期化すれば、ROEや配当原資が制約される懸念がある。
収益性・リターン
| 指標 | 自社 | 中央値 (IQR) | Delta |
|---|---|---|---|
| 営業利益率 | 2.6% | 7.8% (4.6%–12.3%) | -5.1pt |
| 純利益率 | 1.8% | 5.2% (2.3%–8.2%) | -3.4pt |
自社の営業利益率・純利益率は業種中央値を大きく下回り、製造業平均対比で収益性は低位にとどまる。
成長性・資本効率
| 指標 | 自社 | 中央値 (IQR) | Delta |
|---|---|---|---|
| 売上高成長率(前年比) | -11.8% | 3.7% (-0.4%–9.3%) | -15.5pt |
売上高成長率は業種中央値を大幅に下回り、価格要因による減収が製造業全体のトレンドと逆行している。
※出所: 当社集計
精製マージン改善による営業利益率の構造的改善: 粗利率9.3%(前年7.5%から+1.8pt)と営業利益率2.6%(前年1.8%から+0.8pt)の改善は、精製マージンの構造改善とコストコントロールの成果である。ただし、業種平均営業利益率7.8%対比で▲5.1ptの差があり、資源市況や燃料油市況の循環変動に依存する収益構造は継続する。来期予想が利益減益を織り込む中、マージン水準の持続性が注目点となる。
キャッシュ創出力の高さと投資加速のバランス: 営業CF3,924億円、FCF1,008億円と自己創出資金でCapEx1,548億円と配当441億円を賄えており、キャッシュアロケーションは健全である。建設仮勘定829億円(前年552億円)と設備投資が加速しており、来期以降の稼働寄与がEBITDAと営業CFを押し上げる可能性がある。一方で短期負債偏重(短期負債比率50.5%)と在庫滞留(回転日数68日)が運転資本・流動性面の課題であり、長期負債へのシフトと在庫効率化が財務健全性の鍵となる。
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